時間を下さい

昨日、僕が悠に言ったこと

嫌いな訳じゃない。

隣にいるのが当たり前
存在するのが当たり前
だから、分からなくなってしまっただけ

悠への気持ちが、分からなくなってしまっただけ

嫌いじゃない。でも、分からない
だから、時間が欲しい。
２週間だけでいいから、考えさせて欲しい

本当はもっと長かったけど、悠にそう言った。


１年付き合って改めて思ったけど、去年の今頃のような気持ちが、今の俺にはなくて。言葉に表せないけど。

１年ぶりに秋葉原に行って核心したんだ。
アキバに行ったのは、楽しかった。
だけどそれは、アキバという場所が楽しめただけで、
悠の隣にいることが楽しかった訳じゃない、と。

少なくとも去年の初デートの時は、どんな場所でも良かった
悠がいればどこでも良いと、素直にそう思ってた。

なんか、俺、変わったなぁ、と。

付き合う前と付き合ってからのイメージがあまりにも違いすぎたのかも知れない。
悠は、思ってたのとは正反対の人だった。
俺はそんな悠に、いつもムカムカしてた。
俺の思い通りにならないのが、嫌だった。いつも注文付けてた。
思い返せば私は、ありのままの悠を愛せてなかったのかも知れない。

悠は今でもはっきりと僕の目を見て、「愛してる」と僕に言える
僕もそう、言えると思う。
でも、それが本当なのか、今の俺には分からない。


正直……本当に正直、憧れと好きの違いが分からなくなってきた。
悠じゃない、憧れの人がいる。
その人を見るとドキドキしたり、いつのまにか顔がニヤけてしまう。
気が付けばその人のことを考えてる。
そんな自分が、中学の時の自分にダブってきた。

あの時の自分と同じ。
でもあの時の相手は憧れの人であり、好きな人だった。

じゃあ、今はなんで?好きな人?じゃなくて?憧れの人?なだけなの？
そう言われると、何も言えなかった。

確かに、一昔前なら『憧れと好きは違う』って言えたかも知れない。
でも、今の俺は断言できない。
何が違うのか、分からないから。


……うん、前は憧れなだけだった。でも本当は違ったんだ。
間違いなくその人に、僕の存在を特別に思って欲しかった。

ただ分かってるのは、『絶対にそれは有り得ない』こと。
むしろ、それが有り得てしまったら僕は困る。むしろ嫌だ。
そんな無駄なことをして、僕は大事な人を失っていいのだろうか。


もう俺の中に答えはあるんだと思う。
この二週間で心の整理を付けなきゃいけない。
──憧れは、いつまでも憧れでなければいけない。


だから今、少しの間だけ悠と距離を置いてる。
悠の存在がどれほど偉大か、自分に知らしめるために。
前から約束してた日曜だけ会うけど、あとは一緒に帰ったりしない。
別れた訳じゃない。時間が欲しかっただけ。
悠を愛す余裕が、欲しかっただけ。


多分間違いなく、僕が今までに経験した挫折以上の挫折を、僕はしなくてはいけないのだと思う。
願っても何をしても手に入らないモノがあることを、僕は知らなきゃいけない。


僕はどうしよもなく学習能力がない
こんなこと、今まで何度繰り返したのだろう

僕は何人不幸にすれば、気が済むのだろう。