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20070425000600

金星も見た。写真は土星。

天体観測も終わり、学校から駅までの帰り道、暗い中を歩いた。
その時、ある男子と一緒に帰った。

そいつは空気が読めないし威勢の良いホラ吹きで、クラスからも嫌われているようだった。
まぁ嫌われてるのは関係なしだとしでも、一緒にいると疲れる相手だとは俺も思った。
でも根は良い奴だと思ってたからあまり気にせずにいた。

そいつはその日初めて、俺が悠と付き合ってるのに大林先生が好きだということを知ったようだった。

「○○先生は普通に異動したからもう会う機会もないだろうけど、大林はまた来るんだから良かったじゃん」
彼はそう言った。どうやら励ましてくれているように俺には聞こえた。

それに言われてみれば、確かにそうだった。
異動したけど派遣だから一か月に一回でも会えるからまだ良いのかもしれない。
──でも本当は、毎日会いたい。
それに卒業したら、生きているうちにまた会えるかさえも分からない。
学校に行っても先生はいないし、今まで担任になったこともない先生とは会う機会がなさすぎる。
小・中でも、異動した先生と離任式の後に会えたのは本当にわずかな数だ。
どんなに良い先生でも殆どの場合、再会出来ない。
先生と今回会えたのも12回のうち1回。
来年の3月までにあと11回会えればまだ良い方だ。
ずっと夢見た卒業式も、先生は来ないだろう。
──それじゃあ、私は満たされない。

だがその後、僕が「彼女いたの?」と聞くと、彼はこう言った。
「…いたよ。でも死んだ」

信じられなくてつい、「それはない」と言ってしまったが、彼は「現実にあるんだ」と言い放った。
俺は驚きが隠せなかった。

「中3の時に事故で、目の前で死んだ。……俺は守ってやれなかった」
そう彼が言ったのを聞いて、益々悲しくなった。
学校での彼はそんなことも感じさせないような人でむしろ、女なんていらないと言っているような人だった。
だからもしかして、と思って聞いた。
「今も、自分を責めてる?」
すると彼は「当たり前だ」とはっきりと言った。

彼はきっと今でも、彼女のことが忘れられないのだと思った。
彼はその彼女をそれほど、愛していたのだと思う。
決して彼が彼女を殺した訳じゃないけど、「あなたのせいじゃない」と誰が言っても、彼はいつまでも自分を、責めていくのだろう。

僕もそうだった。

誰もが「お前のせいじゃない」と言っても、僕は中2の時に殺人未遂を犯している。
……それも相手は自分にとって、かけがえのない大切な人だったのに。

でも僕は、罪を犯して4年経つ今、自分を今でも責めてるかというとはっきりとうんとは言えない。
人殺しなのにも関わらず、僕は自分の幸せを願ってしまっている。
責めてるとしてもまだまだ足りない。

でも彼は未だに、自分を責めている。
そんな彼の姿を見て、己の幸せを願っている自分が、どうしようもなく醜かった。

そして彼は言った。
「お前はいいじゃん。まだ生きてるのだからさ」

そうだ。
僕は彼の前で、自分のことを不幸ぶっちゃいけない。

『生きてるのだから』なんて、そんな端から見れば当たり前の言葉を、そんな彼に言わせちゃいけない。

でも自分は、言われるまで気付いてなかった。

卒業式の後、会えるか分からない
って言ったって、偶然またどこかで出会える可能性はある。
なのに、その可能性さえもない
いつか会える、なんて夢も見れない彼に
そんな弱音を吐く自分は、あまりにも酷過ぎる。

その日、彼が言った言葉は僕にとって一つ一つが辛かった。
だけど彼は励ます為に、僕にその話をしてくれた。
彼の心遣いを、僕は忘れない。

いつか、どこかでまた先生と会えるかもしれない
……そして僕が傷つけたあの人ともまた、会えるかもしれない。

そんな希望があるのだから僕は、弱音を吐いちゃいけない。
辛いような気持ちになっちゃいけない。

だから、会えた一日を大切にして、卒業した後もいつかまた会えるって言い聞かせて、僕は歩いていくしかない。

最後に彼は、「彼氏を大事にしろよ」と言って、
「あとお前、喋んなきゃまだかわいいんだから、下ネタ言うな!」と、僕の頭をなでて帰ってった。

彼の背中を見て、いつか彼の傷を分かり合える人が現れると良いと心から思った。

強くなりたいと改めて思った。
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