扉

本当は行きたくなかったんだ。
私にとって、あの場所はあの子にとっての歩道橋と同じだから。

ないものねだり
だけど私はその扉を開けなかった。
たった、それだけの違い。

でも、その扉を開けても
その人はそこにはいなかった。

それは当たり前
だってもう、私の前にその人はいないのだから。

代わりにいたのはあいつだった。
そして私たちがそこでしたコト

そして私は、その扉を開けることで一番欲しいモノを手に入れた。
あの日、ないものねだりをしなかった私が手に入れられなかったモノ。

たとえ、時が過ぎていても
相手が違っていても
私はその部屋で手に入れた事に変わりはない。

だけど手に入ったのはほんの一瞬で
また私は探さなくてはいけなくて。

来年になれば絶対手に入ることも分かってる。
だけど今もずっと、一番欲しいのはぬくもりだけ。
私を眠らせてくれるその腕だけ。

それを手に入れる為なら、
私はどんな嘘もデタラメも言える。

だからずっと、私は本当に欲しい人を手に入れられずにいる。

君は生きてる。
それだけで良いと思うのは、もう無理だから
私は絶対、手に入れる。
たとえ誰かが泣いたとしても。

でも手に入らなかった時、抱き締めてくれるその手を未だに離せないのは
やっぱり私はどうしようもないのかな。

それが、今の私の答え。